錦影繪池田組
復活と創作

桐材を加工して「風呂」と「種板」を製作。

スライドの製作。

「風呂」の操作(和紙スクリーンの裏側)。

錦影絵の復活

 錦影繪池田組が、錦影絵の「風呂」(木製幻燈機)と「種板」(スライド板)の復元作業を始めたのは、平成16年のことです。 少ない資料と想像力をたよりに、構造や製作方法に試行錯誤を重ねました。「風呂」は、当時使われていたのものを忠実に再現するよう努めましたが、 詳細な寸法の把握や、材料となる桐材の確保など、苦労の連続でした。(桐材の確保には、今でも苦労していますが。) また、スライドや光源はそのまま復元するのではなく、製作工程や操作の安全性・映写の効果を考慮して、現代の素材におきかえています。 さらに、絵の動きを演出する「種板」の仕掛けに独自の工夫を凝らしたり、光源システムを携帯式にするなどの新機軸を盛り込み、装置としてのより高い完成度を追求しています。 上演する物語作品については、錦影絵の持つ魅力を最大限に引き出し、子供も大人も楽しめるようなオリジナルストーリーを、ほぼ毎年創作することとしました。
 錦影繪池田組の「錦影絵」は、単なる古典芸術の復元ではなく、そこに創造的な価値と魂の息吹を与えた、発展を続けて行く新しい現代のアートです。

「風呂」

「種板」

「風呂」について

 「風呂」は、基本的に一人が一台を前面に抱えて持ち操作します。主要部材には、軽く丈夫で耐熱性に優れた桐材を使用しています。 中に光源がセットされており、前面には投射レンズとそれを覆う黒布、そしてスライドと仕掛けを仕込んだ「種板」を差し込む穴があります。

作品の紹介

 「狐魄奇譚(こんぱくあやしかたり)」-- 平成28年

商家の旦那風の旅人。通りかかった峠の稲荷の祠に供えられた酒とおいなりさんを、平らげてしまいました。そのせいで、化け物に襲われ、麓まで勢いよく転げ落ちてしまいます。 我に返った旅人の目の前を、狐の不思議な葬列が通り過ぎていきました。やがてあたりには蛍が飛び乱れ、障子に女の影が映る一軒家が現れました。雨戸が閉てられると、すべてが漆黒の闇に吸い込まれていきます.....。 「古狐輪廻之理(ここんてんしょうのことわり)」を改編・改題した作品です。

 「古狐輪廻之理(ここんてんしょうのことわり)」-- 平成28年

峠の稲荷の祠の前、旦那と奉公人は、女がお供えをするのを見かけます。旦那は、奉公人が止めるのも聞かず、お供えを平らげてしまいました。 空になったとっくりを投げ捨てると、昼寝をしていた狐の頭に命中、狐は伸びてしまいます。突然、祠が揺れ、火の玉に襲われた旦那は、麓の草原まで転げ落ち、赤子へと身を変えて...。 人間と狐が織りなす、輪廻を題材にした不思議で玄妙な世界の物語です。

 「池田の猪買い(いけだのししかい)」(大阪歴史博物館所蔵種板「道化獅子買い」復元改題)-- 平成26年

あるあわてものの男が、冷え性の薬になるという猪肉を求めて猟師のもとへ向かいます。道行く人と騒動を起こしながら、池田の猟師の家へ。 山中で運よく猪を見つけましたが、男はあれこれと注文をつけるので、猟師はなかなか銃の狙いが定まりません。それでもなんとか、猪を仕留めるのですが...。 大阪歴史博物館所蔵種板に所蔵されていた古典作品の資料を、復元・改題した作品です。

 小品「曲独楽(きょくごま)」 -- 平成26年

七七四と四六という二人の男が、 三途の川で、鎮魂の石積みしている子供の、せっかく積んだ石を崩してしまいます。泣いてしまった子供の機嫌を何とかとりなそうと、二人は独楽を使った曲芸を披露。 滑稽な独楽の動きに喜ぶ子供、そして独楽の載った釣竿にぶら下がる魚が気になる猫。面白おかしい場面が繰り広げられます。 「春朧花機巧に壁くぐるとは」の中から、もっとも動きのあるシーンを抽出した作品です。

 「春朧花機巧に壁くぐるとは(はるおぼろはなからくりにかべくぐるとは)」 -- 平成24年

三途の川で石積みをする、白猫を連れたひとりの子供。蝶につつかれて河原に現れた男、七七四と四六の、子供との掛け合い。男たちの慕っていた女(蝶の化身)の、心中という辛い過去。 女の不幸に加担したという、男たちの後悔。石積みに得心し、光に包まれて去って行く子供と白猫。そして、すべての魂が消え去った後の河原に舞う、桜の花弁と蝶......。 生死のはざまという幽玄世界で交錯する、ひとびとの鎮魂の物語です。

 「寺内町当曲蛍道(じないまちあたりきょうげんほたるみち)」 -- 平成23年

喜六と清八は、いい歳をして狭いところを通り抜けるのが大好き。ある日、先を歩く縁起物売りの招き猫に誘われるように木の隙間を抜けようとすると、その先は薄暗い穴のようなところでした。

 「桜白浪憑依豆袋(さくらしらなみひょいとぶくろ)」 -- 平成22年

憑いてない空き巣稼業の男が、最後に盗みに入った家は、化け物たちの住み家でした。驚き逃げてたどり着いたのは、川の端。 そこで、ひたすら袋から何かをつまんで食べている老人に出会ったことで、またもやとんでもない目に。桜の花びらが静かに降り散る中で、不思議な話が繰り広げられます。

 小品「花輪車」 -- 平成21年

回転する3つの花輪車が、色鮮やかで美しい幻想世界を描き出します。トップページの動画はそのうちのひとつを模したものです。小品はこのほか、「雨」 「風」 「ボール」 があります。

 小咄「憑いてない日」 -- 平成21年

憑いてない空き巣の男。その日の最後に入った家で、傘や反物、壺を手に入れますが、それらはみんな化け物なのでした。正体を知った空き巣は驚いて逃げ出し、化け物たちはしてやったりと浮かれ騒ぎます。

 「ほたるみち」 -- 平成21年

いい歳して狭いところを通り抜けるのが大好きな長屋の住人、喜六と清八が巻き込まれた災難。それは、いつも長屋の前を通る、招き猫をしょった縁起物売りの仕業なのでしょうか。

 「ぐるんぐるん」 -- 平成20年

近道の公園を抜けて会社に向かう途中のサラリーマン。ぐるぐる風から現れた不思議な男たちと、サーカス小屋の動物に翻弄されてしまいます。そして、一番強い風が彼を空中に吹き飛ばし......。

 「猫夜叉」 -- 平成19年

目の見えない奏太は、雨の中で後をついてきた不思議な猫と一緒に暮らすことに。猫が女に代わり、女の顔を見たいと願った時、奏太の目にしたのは死神でした。 命と引き替えに願いが叶っていたのです。

 「ぽぽたん」 -- 平成18年

ケンカばかりしているタンポポの綿毛、タンタとポポロが旅に出ます。さまざまな出会いや経験を通して相手の思いに気付き、戦争で荒れ果てた赤い国と青い国の境で仲良く咲いて、両方の国の人々を和ませます。

 「番町皿屋敷」 -- 平成17年

青山鉄山は、妾になることを拒んだ下女の菊を、大切な皿が足りないと言いがかりをつけて殺し、亡骸を井戸に投げ入れてしまいます。 その後鉄山は、毎夜井戸から現れて皿を数える菊の幽霊に悩まされることに。人形浄瑠璃「播州皿屋敷」をベースにした作品です。

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